相続土地国庫帰属制度とは
皆さん、「相続土地国庫帰属制度」って聞いたことありますか?
令和5年に新設された制度なのですが、簡単にいうと「相続したけど使い道がない、売れもしない不要な(いわゆる負動産)を、国が引き取ってくれる」という救済措置です。
あくまで国が「買い取り」をしてくれるわけではなく、「引き取り」してくれる制度です。
「えっ!じゃあ、地方にあるいらない実家や山林を国にタダで引き取ってもらえるの!?」と思いますよね。
まずは、どんな人が申請できるのか、国のフローチャートを見てみましょう。

(画像引用:相続土地国庫帰属制度の概要)
基本的には、相続や遺贈によってその土地を取得した人が対象になります。
一見すると「神制度」のように思えるこの表ですが……実は、綺麗事だけでは済まない「驚きの裏の顔」があるんです。
詳しく見ていきましょう。
詳しく確認:国はそんなに甘くない!
結論からいうと、国はどんな土地でも引き取ってくれるわけではありません。
引き取った後に、国の管理コストになったりトラブルの種になったりしそうな土地は、「却下」または「不承認」として容赦なく落とされます。
宅地、農地、山林も一応対象ではありますが、以下のような土地は一切引き取ってもらえません。
❌ 申請すらできない土地(却下事由)
・建物が立っている土地(←ここ重要!実家があるなら自腹で解体して更地にしないとダメです)
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・通路など、他人の利用が予定されている土地
・土壌汚染されている土地
・境界が明確でなく、所有権の範囲で争いがある土地
❌ 審査で落とされる土地(不承認事由)
・一定の勾配・高さ(崖)があり、通常の管理に過度な費用・労力がかかる土地
・管理や処分を妨げる工作物、車両、樹木などが放置されている土地
・地下に除去が必要な有体物がある土地
・隣人との紛争を解決しないと管理ができない土地
「更地にしなきゃいけない」「境界をハッキリさせなきゃいけない」となると、申請までに、専門家に頼んで数十万〜の「自腹コスト」がかかるケースがほとんどです。
さらに追い打ち!かかる費用は?
無事に厳しい審査をクリアしたとしても、タダでは引き取ってくれません。
手続きには、「審査手数料」と「負担金」の2つの費用が重くのしかかります。
審査手数料:土地1筆あたり 14,000円
負担金:原則20万円(10年分の国庫管理費用相当額)
ただし、市街地にある宅地や、一部の農地・森林など、草刈りや管理の手間がかかる土地は、面積に応じて20万円以上の負担金必要になります。
具体的な負担金の算定基準は、こちらの国の資料の通りです。

(画像引用:相続土地国庫帰属制度の概要)
これ、どう思いますか?
・相続した土地があるけれど、全く売れない。
・固定資産税や管理の手間を、子供たちに引き継がせたくない。
・だから、大金を払ってでも自分たちの代で綺麗に片付けたい!
という強い覚悟がある方には、ぜひ使ってほしい制度です。
でも、「国がタダで引き取ってくれてラッキー!」なんて軽い気持ちで使える制度では絶対にありません。
制度の裏の顔:不良債権の押し付け合い
「国がお金(負担金)をもらわないと引き取れないような土地」というのは、所有者にとっては経済的な価値を生み出さず、維持費ばかりがかかる「実質的な負債(負の遺産)」に他なりません。
「国が認めた不良債権のような土地なのに、なぜ手放すまで毎年固定資産税を払い続けなければならないのか?」という矛盾や理不尽さを感じますよね。
実は、「所有権の放棄」が法的に認められていない日本ならではの歪みがここにあります。
海外(例えばドイツなど)では、所有者が土地の所有権を放棄して国や自治体に帰属させる権利が比較的広く認められていますが、日本では長年それが認められてきませんでした。
そのため、「売れない・使えない・でも税金と管理責任だけは発生し続ける」という、まさに「国と国民の間での、合法的な不良債権の押し付け合い」が起きているのがリアルな現状です。
この制度の未来について、2つのストーリーが思い浮かびます。
✨️良い方向への展望✨️
申請・処分手続きの柔軟化
政府は国が引き取った後の土地の処分コストを減らすため、手続きの簡素化や、隣人にそのまま売却しやすくする仕組みの検討を始めています。
「申請前の売却」を国がバックアップ
国に引き取ってもらう前に、民間の不動産業界と連携してマッチングする相談窓口の強化が進んでいます。
国に大金を払う前に、数万円でも民間市場で売却できるチャンスが増える可能性があります。
要件緩和の議論
「山林」の承認率の低さや境界確認の厳しさが課題となっているため、将来的には引き取り基準をもう少し緩めてほしいという世論に応える形での制度改正も視野に入ってきています。
💦悪い方向への展望💦
国が引き取った土地が「国の不良債権」
国庫に帰属した土地の多くは、買い手がつかずに国が抱え落ちしている状態です。
財務省からは「これ以上引き取りが増えると財政負担が耐えきれない」との懸念が出ています。
「負担金」引き上げや審査の厳格化リスク
国が悲鳴を上げ始めると、これ以上お荷物を増やさないために「引き取りのための負担金をさらに高くする」、あるいは「審査をより厳しくして落とす」という、実質的なブレーキがかけられる恐れがあります。
固定資産税の課税は「逃げ道なし」
始まった「相続登記の義務化」に加え、住所変更の登記義務化なども順次始まっています。
これにより、国は「誰がどこの土地を持っているか」を完全に把握できるようになります。
「放置して固定資産税を有耶無耶にする」という逃げ道は完全に塞がれるため、国庫帰属制度の審査に落ちた人は、これまで以上に逃げ場のない課税の重圧に晒されることになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
国がいらない土地を引き取ってくれる「相続土地国庫帰属制度」。
その実態は、数百万の解体費や数十万の負担金を自腹で支払い、「大金をドブに捨ててでも、資産をゼロにする」という、究極の損切り制度でした。
まるで株の「強制ロスカット」や、塩漬け株を大赤字で損切りする感覚にそっくりですよね。
明暗を分けるのは、「親が元気なうちに、その土地をどうするか家族で終活をしておくこと」です。
呪いの装備(負動産)を子供に遺さないためにも、今のうちから家族でしっかり話し合っておきましょう!
そして、これから資産を持つ若い世代の私たちは、売れない土地にお金を使うのではなく、「いつでも現金化できて、価値が生み出せる正しい資産(インデックス投資や1株投資など)」にしっかりお金を回していきたいですね。


コメント